注目講演

注目講演

秋講演会プログラム編集委員が選んだ20件の注目講演です。

中分類分科名 講演番号 講演タイトル 講演者 所属
注目講演推薦理由
2.2 発生装置・検出器開発・計測技術 10a-N107-4 月環境放射線モニターLunar-RICheS搭載小型撮像チェレンコフ検出器の開発 中村 吏一朗 理化学研究所
宇宙飛行士の被ばく線量の評価を行うためにはMeV/nからGeV/nと広いエネルギー範囲の荷電粒子の計測を行う必要があり、高エネルギー荷電粒子を高精度に計測することができるエネルギースペクトル検出器の開発が求められている。本講演は、理化学研究所、東京理科大学、JAXA が共同で開発を行っている15 MeV – 2 GeV の陽子エネルギーの計測を目指す Lunar-RICheSに関する研究発表である。本研究は、今後の宇宙開発における被ばく線量評価に資するところが多く、本講演を注目講演に強く推薦する。
2.4 ライフサイエンス・医療・宇宙地球環境・放射線教育 9a-N103-7 Sub-second dynamic rat imaging with an ultrasensitive small animal PET scanner Kang HanGyu 量研
超高感度な動物用PETの特性を活かし、0.5秒のフレームでダイナミックPETイメージングを実現した本研究は、モデル動物における薬物動態解析の新たな可能性を切り開くものである。従来のPET装置と比較して体軸視野を大幅に拡大しつつ、DOI(Depth of Interaction)検出器の導入により空間分解能の劣化を効果的に抑制している。ラット全身を高い時間分解能で同時に撮像した本成果は、疾病モデルを用いた生体機能や薬物動態の解析に新たな視点をもたらし、医用分野の発展にも大きく寄与するものと期待される。以上の点から、本講演を注目講演として強く推薦する。
3.6 レーザープロセシング 9p-N306-1 ベッセルTSL加工法による超高速・超高アスペクト比穴あけ加工の実現 伊藤 佑介 東大院工
先端半導体パッケージングやマイクロフルイディクスなど幅広い分野において、ガラスの高品質な深穴加工技術の開発が喫緊の課題となっている。本講演はレーザーパルスの時空間モードの最適化により高品質なガラス穴あけを超高速に実現する新技術について報告するものであり、幅広い応用展開が見込まれる次世代ものづくり技術であることから注目講演として推薦する。
3.12 半導体光デバイス 8p-N206-7 200 GBaud級InGaAs/InP高速フォトダイオードの光強度耐性 山田 友輝 NTT先デ研
最先端の大容量光通信に求められる200GBaud級受光技術として、垂直入射型の超高速フォトダイオードを提案し、高速化の課題であった光強度耐性を実用システムレベルまで向上させた。本講演は光通信最難関国際会議であるECOC2024-PDPでの報告を更に発展させたものであり、学術・産業の両面から注目度の高いものである。
6.1 強誘電体薄膜 8a-N201-10 スパッタ法のガス比によるAlN薄膜の極性制御と二次モード分極反転共振子の作製 花井 彩香 早大先進理工, 材研
6G以降の通信に向けてBAWフィルタが注目される中、分極反転構造を用いた方式は10GHz超の動作が可能なことから特に期待されている。従来、分極反転構造の作製には複雑なプロセスが必要だったが、本講演では、スパッタ成膜時のガス比制御といった簡便な手法によって同構造の作製に成功し,実用的な製造プロセスの確立に向けた重要な成果として注目される。
6.4 薄膜新材料 7p-N202-11 レーザー誘起グラフェンと金属酸化物の複合による高感度・高信頼性なガスセンサの創製 桂 章皓 京工繊大
α-MoO3は揮発性有機ガスに対して高感度に反応する。しかし、低いキャリア移動度に起因する高い電気抵抗がデバイス化に向けた問題であった。本研究ではα-MoO3を柔軟なグラフェン構造と優れた電気伝導性、大きな比表面積をもつレーザー誘起グラフェン上に複合することで、低い電気抵抗で高感度なガスセンサを開発することに成功した。また、揮発性有機ガス、特にメタノールに対して高く安定したガス反応を示すことを見出した。創製された高感度かつ高信頼性なガスセンサは、ヘルスケアなど広い領域で活用展開が見込め興味深い。注目講演に値するとして推薦する。
8.1 プラズマ生成・診断 10p-N323-8 NO3ラジカル計測に基づいた空気プラズマ反応モデルの構築 佐々木 渉太 東北大院工
空気プラズマは,空気から所望の水素・窒素・酸素から成る活性種をその場合成することが可能であり,医療・農業・環境分野等における応用が期待される.著者らは高い反応性を有する三酸化窒素ラジカルに着目し,分光計測による定量に成功した.この成果に基づき構築される高精度反応モデルはプラズマ応用技術の発展に重要なものであり,注目講演として推薦する.
11.3 臨界電流,超伝導パワー応用 10a-N404-1 高速成膜したYBCOナノコンポジット膜の磁場中臨界電流密度制御 神道 凌也 名大工
本講演は,レーザー蒸着法で作製する希土類系高温超伝導薄膜に対し,高臨界電流密度化に有効な人工ピン物質であるBaHfO3に,Nbをドープすることで,高速成膜100 Hz時での磁場中の臨界電流密度において約5倍の向上を実現している.現在,核融合炉用に大量の超伝導線材の供給を必要としている産業応用に不可欠な研究として,注目に値する発表である.
13.8 光物性・発光デバイス 9a-N205-2 Demonstration of (219–221 nm)-Band Extreme-far-UVC LEDs on c-Sapphire Amina Yasin RIKEN
本講演は、深紫外領域で発光するAlGaN系LEDに関する報告である。近年、ウィルス不活化効果が高く且つ人間への安全性が高い波長領域である230 nm以下で発光するLED実現が期待されている。本研究では、発光層である量子井戸および周辺のAlGaN層のAlNモル分率を90%程度まで上げることにより、発光波長を220nm付近まで短波長化させることに成功しており、極めて注目すべき講演である。
15.4 III-V族窒化物結晶 9p-N301-3 誘導ラマン散乱を用いたGaN結晶中転位の高速3Dイメージング 高橋 俊 東大院工
本講演は、GaN基板中の転位を対象に、誘導ラマン散乱とMPPLを組み合わせた世界初の高速3Dイメージングを実現し、らせん転位の識別にも成功した成果をまとめている。パワーデバイス性能向上に直結する革新的手法であり、学術的・産業的に高いインパクトを有する。
16.1 基礎物性・評価・プロセス・デバイス 7p-N405-5 無毒元素のみで実現する酸化物バルクガラスのn型伝導 光井 和輝 愛媛大院理工
環境負荷の低い元素で構成する伝導性ガラスの作製とその伝導機構に関する発表である。講演奨励賞を受賞した前回の発表では酸化鉄とビスマスを含有するフツホウ酸塩ガラスがフッ化物イオンの導入によって比較的高い伝導性を示し、今回新たに伝導性の高い酸化物系ガラス材料を報告している。酸化物系ガラスの伝導性付与に対する新たなアプローチでありとても興味深い。
17.3 層状物質 7p-N302-19 結晶方位分解層間摩擦力顕微鏡 瀬尾 優太 東大生研
原子層間の摩擦力を評価する新手法に関する講演である。原子間力顕微鏡のカンチレバーを原子層で覆った原子層短針を用いて試料表面を走査することで、摩擦力の測定を行っている。この手法を用いることで、特定のツイスト角度の時に摩擦力が大きくなることが実証されている。手法としても得られた結果としても新規性・インパクトが高く、注目講演として推薦する。
21.1 合同セッションK 「ワイドギャップ酸化物半導体材料・デバイス」 10p-N105-9 放射光X線トポグラフィーによる実動作中のβ-Ga2O3パワーデバイスにおける転位のオペランド観測技術 姚 永昭 三重大学, ファインセラミックスセンター
β相酸化ガリウムベースのパワーデバイスはバルク基板の進展とともに目覚ましい進歩を遂げている。本講演では放射光X 線トポグラフィーを基盤としたオペランド観測技術の構築について紹介される。デバイス動作時の転位挙動の理解は、学術的な意義が高いうえに、産業的に重要な成果と言えるため注目講演として推薦します。
23.1 合同セッションN
「インフォマティクス応用」
9p-S301-9 金属結晶に基づくイオン結晶の構造予測手法 横山 智康 パナソニック ホールディングス
本研究は、結晶学的考察から導かれたルールベースの手法で新たなイオン結晶構造を系統的に生成する方法を提案したものである。大量の学習データを必要とするデータ駆動的アプローチとは異なり、専門家の知見をルールに落とし込んだ情報を活用して探索空間を適切に絞ることで、実現確度の高い新構造を生成する道筋を示したという点で注目に値する。
FS.1 フォーカストセッション

「AIエレクトロニクス」

9a-N106-3 2000ノードの光スパイキングニューラルネットワークを用いた組合せ最適化 稲垣 卓弘 NTT物性研
光パラメトリック発振器による2000ノードの大規模な光スパイキングニューラルネットワークを組合せ最適化に応用した研究。光ファイバによる時間多重化、FPGAによる柔軟なネットワーク設定、及びスパイキングダイナミクスの活用など、物理・デバイス・情報分野を横断する先進的な試みとしてAIエレクトロニクスの今後を展望する上でも注目すべき発表です。
KS.1 固体量子センサ研究会 9p-N303-9 4H-SiC中単一スピンの高感度光電流検出の実現 西川 哲理 京大化研
4H-SiC中のシリコン空孔は有望な半導体量子ビット候補である。発表者らは、光電流磁気共鳴法に独自技術を適用することにより、従来の光検出磁気共鳴法を上回る信号対雑音比でのスピン読み出しに成功した。この結果は量子技術応用に大きく貢献する注目すべき成果である。
CS.2
3.2 情報フォトニクス・画像工学、4.4 Information Photonicsのコードシェアセッション
7p-N322-6 Lensfree On-Chip Quantitative Phase Microscopy Chao Zuo Nanjing Univ of Sci. and Tech.
計算光学分野を牽引するChao Zuo(Nanjing University of Science and Technology)教授は、コンパクトかつレンズレス構成のオンチップ位相顕微鏡を通じて、従来の回折限界を超える高空間帯域積・高スループットなイメージングを実現している。本講演では、ピクセルサイズの制約を克服するスーパーリゾリューション技術や、3次元ラベルフリー観察を可能にする回折トモグラフィーとの統合の展望も示されており、応用物理の多分野に波及する技術革新として強く推薦する。
CS.5
3.10 フォトニック構造・現象、3.13 シリコンフォトニクス・光電融合集積・光制御のコードシェアセッション
9a-N202-9 光電気等化によるSiフォトニック結晶光変調器の100 Gbaud動作 川原 啓輔 横国大院工, 東科大工
Siフォトニック結晶導波路(PCW)光変調器に光と電気の伝搬遅延を利用した等化器を組み込むことで、デジタル信号処理(DSP)フリーで100-Gbaudの高速変調を実証したものである。提案手法によって帯域は35GHzから81GHzに大幅に拡張され、信号特性も前方誤り訂正(FEC)しきい値以下のビット誤り率(BER)を達成したことから注目に値する。
T3 Lab to Fab:研究開発と量産を最速でつなぐ半導体DX 8p-S202-8 300 mmウェハを見据えた2D/2.5Dマテリアルの量産化技術 吾郷 浩樹 九大院総理工, 九大半導体セ
日本の半導体産業が再び輝くには、研究開発から量産までを超速でつなぐ新戦略が必要です。しかし、ラボで手のひらサイズの基板上に実現された技術を、300mmウェーハを標準とする量産ファブで再現するには、大きな壁があります。吾郷教授の挑戦は、2D/2.5D材料を300mmウェーハ上で創製する技術で、次世代チップが次々に生まれる未来を加速します。
T21 宇宙開発を支えるバイオデバイス科学の最前線 9p-S203-3 宇宙ビジネスのリアル:STARSPHEREプロジェクトと宇宙放射線リスク 梅田 哲士 ソニーグループ株式会社
宇宙空間で取り組んだ「STARSPHERE」プロジェクトの現場から、感性とテクノロジーの融合による新たな宇宙ビジネスの可能性を語っていただきます。放射線環境による実証的課題も含め、応用物理分野に新たな視座を提示する講演です。