注目講演・プレスリリース

注目講演

春講演会プログラム編集委員が選んだ17件の注目講演です。
注目講演のうち、5件はプレスリリースをしています。注目講演のプレスリリースHPはこちら

中分類分科名 講演番号 講演タイトル 講演者 所属
注目講演推薦理由
2.2 発生装置・検出器開発・計測技術 17a-K201-6 新規核種・新規薬剤・新規計測法による新しいセラノスティクスの研究 高橋 浩之 東大
本研究は抗体等の長期間に渡る体内動態の観察のため、新規陽電子放出核種の探索から核種製造、抗体標識、動態観察までを一貫して行う体制のもと研究が進められている。既に半減期6日のTe-118の新規核種の製造に成功し、また、ナノキャリアを用いた薬物送達も最終的な目標に含まれており、将来的な創薬分野への貢献が大きく期待できる。

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3.1 光学基礎・光学新領域 14p-K305-12 キラルMie空孔共鳴体のキラル光学応答 新家 寛正 東北大多元研
ナノ構造によりキラル光学応答を増強する取り組みが活発に行われている中、Mie空孔共鳴に着目し、高屈折率誘電体のナノ陥没構造にキラリティを付与した場合のキラル光学応答を調査する本実験研究は注目に値する。
6.1 強誘電体薄膜 15p-K503-4 光で大きく速く繰り返し変形するBiFeO3自立膜 三津谷 怜 北大院情報
本研究は強誘電体自立膜への光照射により大きな変位が得られることを実証するものである。講演者らはBaTiO3に比べバンドギャップが小さいBiFeO3に着目して自立膜光アクチュエータを試作し、先行研究を大幅に上回る、シート長3mmに対し1.8mmもの大きな変位を得ることに成功した。本研究は光駆動デバイス応用の可能性を示す進展として注目される。

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8.5 プラズマ現象・新応用・融合分野 16p-K304-9 低温プラズマ中で成長する化学反応ネットワーク 南 智貴 成蹊大学
大気圧下でのプラズマは、反応が複雑に絡み合い活性種が次々と生成される。ここでの反応制御には系の理解が重要となる。本研究では、大気圧下のHe+O2+N2 プラズマにおける学術的解釈の手段として、成長する反応ネットワークを記述する統計的解析を活用する手法を提案した初めての研究である。
10.1 新物質・新機能創成(作製・評価技術) 15p-K303-3 エピタキシャルCo/Pt(111)超格子垂直磁化膜の原子層厚のスパッタ制御 介川 裕章 NIMS
原子レベルで制御された垂直磁化超格子のスパッタ成膜に成功しており、注目講演に値する。
11.1 基礎物性 15p-K209-6 第一原理バンド計算に基づく高圧下多層ニッケル酸化物超伝導体の研究 榊原 寛史 鳥取大AMES
最近発見された高い超伝導転移温度を有する化合物群であるニッケル系酸化物超伝導体について, 周辺化合物や高い超伝導転移温度を有する化合物の候補について理論的な研究の最前線をご講演いただきます.
12.2 評価・基礎物性 15p-K404-1 プルシアンブルー薄膜の荷電状態制御によるセシウムイオンの選択回収 中谷 真人 名大院工
原子力発電所の事故により飛散した放射性Csを選択性よく選別し除去する手法の開発は重要な課題である。プルシアンブルー(PB)は良く知られた顔料で,経口投与によるCs吸着剤としても利用されるが,本講演はPB薄膜の荷電状態を電気化学的に制御することでCsの吸収選択性を増強できることを報告するもので,注目講演に相応しい社会的意義を有する。

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12.2 評価・基礎物性 15p-K404-7 角度分解光電子分光によるダイマーMott絶縁体β’-(BEDT-TTF)2ICl2の電子構造観測 中澤 遼太郎 分子研
電荷移動錯体として知られる材料群は,低次元物性や超伝導など多彩な電子物性を発現する分子性固体として物性物理の一領域を成し多くの研究が為されているが,その電子構造を実験的に計測した例は意外なほど限られている。本講演は,ダイマーモット絶縁体β’-(BEDT-TTF)2ICl2分子単結晶の電子バンド分散計測を報告するもので,学術的注目度が高い。
13.4 Si系プロセス・Si系薄膜・MEMS・装置技術 16a-K103-7 レーザー励起光電子顕微鏡で可視化したフォトレジスト上の潜像と電場分布 藤原 弘和 東大院新領域, 東大MIRC
フェルミ準位近傍に始状態を持つ光電子の実空間像を拡大投影することで顕微像を得る手法であるレーザー励起光電子顕微鏡laser-PEEMを用いて、フォトレジスト上の内部構造や電場分布を可視化している。光電子のエネルギー分布観察から、露光領域の光電子強度増加は仕事関数の減少によること、及び、光電子スペクトルの重心がシフトしていることを発見し、露光箇所が相対的に正帯電していることを明らかにしている。このように新規手法を用いて、新しい知見を得ている。
13.6 ナノ構造・量子現象・ナノ量子デバイス 17p-K302-1 ナノ構造半導体の輸送現象解明およびスピン軌道相互作用の電気制御の研究 高瀬 恵子 農工大工
本研究では、III-V族半導体ナノワイヤを用いた様々な構造の電界効果トランジスターを作製し、ラシュバ型スピン軌道相互作用を低ゲート電圧で非常に大きく制御することで、巨大スピン軌道相互作用を実現することに成功した。本成果は、将来の低消費電力・ナノスケール・スピンFETの実現に大きく貢献するものであることから、注目講演に推薦する。
16.1 基礎物性・評価・プロセス・デバイス 17p-K308-11 価数揺動現象の制御による不揮発性抵抗スイッチの実現 畑山 祥吾 産総研 SFRC
現在、量産SCMの記録原理として相変化材料のアモルファス/結晶相変化に伴う不揮発性抵抗スイッチが利用されているが、データ書き換えには材料の融点以上まで加熱する必要があり消費電力が大きい課題があった。本講演で提案するSmTe型相変化材料は、結晶構造を維持しつつ価数の揺動のみで不揮発性抵抗スイッチを実現した結果であり、注目に値する講演である。
17.3 層状物質 15p-K301-1 グラフェンFETのオンチップテラヘルツ測定 吉岡 克将 NTT物性研
グラフェントランジスタは、グラフェン中電子の超高移動度を反映し、テラヘルツ領域での信号増幅が可能と期待されるが、テラヘルツ領域での増幅の実験的確認は未達である。本講演は、高結晶性グラフェンや封止膜の利用、測定系の工夫により、既報よりも高い周波数での増幅を報告している。将来的なテラヘルツ領域での確認にも期待が持てる成果であり、注目に値する。
21.1 合同セッションK 「ワイドギャップ酸化物半導体材料・デバイス」 17p-Y1311-7 結晶異方性ガスエッチングによる(100) β-Ga2O3 上のエアブリッジ作製 大島 孝仁 NIMS
本講演は、Ga2O3を加工し、MEMSで必要なエアブリッジの作製技術に関する報告である。Ga2O3は、5 eVにもおよぶバンドギャップを有する事から、次世代パワー半導体や太陽光ブライドセンサ材料として期待され世界中で開発されているが、機械的特性も良好でMEMSへの展開も注目されている。MEMSは空中に支持された機械的可動部(エアブリッジ等)を必要とするが、これまで簡便なプロセスで作製する術が確立されていなかった。一方、著者等はエアブリッジを直接簡便に作製する事に成功された。今後の技術開発に必要不可欠な注目すべき内容である。
23.1 合同セッションN「インフォマティクス応用」 16p-K505-10 化学組成の主成分分析による無機機能材料の先行研究の俯瞰 桂 ゆかり 物材機構, 筑波大数理, 理研
Starrydataは、論文中のグラフから大規模実験データを収集する日本発のオープンデータプロジェクトである。講演者らはStarrydataに収録された約5万試料の熱電材料と約7千試料の磁石材料について、化学組成の主成分分析(PCA)を行い、多元系状態図に類似した立体図形を出力した。これは研究分野全体の先行研究を俯瞰し、高特性領域や未探索領域を可視化する新しい解析として期待できる。

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FS.1 フォーカストセッション「AIエレクトロニクス」 16p-K306-11 印刷エレクトロニクス技術で作製された高精細イオンゲルパターンの電気化学反応を利用した物理リザバー素子 島 久 産総研
イオンゲルと電極界面における電気化学反応を物理リザバーに応用する報告である。従来研究のイオン液体では半導体微細加工プロセス導入に懸念があったが、本研究では微細加工が可能な印刷エレクトロニクス技術を用いてイオンゲル物理リザバー素子を作製している。また、基本動作性能、及び機械学習性能についても評価を行っている。微細加工プロセス親和性から産業応用が期待でき注目に値する。
KS.1 固体量子センサ研究会 16p-K503-3 SiC中のバナジウム欠陥とシリコン空孔を用いた温度・磁場同時計測 佐藤 真一郎 QST
炭化ケイ素(SiC)中のシリコン空孔はナノスケールで磁場や温度計測が可能な量子センサとしての応用が期待されていますが、温度計測において信号強度が弱いなどの問題がありました。本発表ではバナジウム欠陥とシリコン空孔の2つの欠陥を用いることによって温度と磁場の同時計測が可能であることを示しており、SiC量子センサによる計測の新しい可能性を見出しています。

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T2 グリーンファブの未来を拓く:持続可能なものづくりへの挑戦 15p-K206-10 ウェットエッチングプロセスにおける少サンプル下でのレシピ作成および検証を行うAIシステム 柴田 行輝 東大工
半導体製造プロセスのDXに向け、本講演では枚葉処理ウェットエッチングプロセスを仮想空間でシミュレーションし、属人的だった歩留り向上のレシピ決定工程を自動化・効率化する手法を提案する。レシピの自動生成とその検証に双方向AIモデルを活用する興味深いアプローチを実装した。講演では、自動化・効率化への大きな貢献を示す有望な結果の報告が期待される。

プレスリリース

注目講演のうち、以下の5件については2025/3/10にプレスリリースいたしました。