注目講演

各分科に投稿された講演の中から,プログラム編集委員が「おもしろい講演なので、他の分科の参加者にもぜひ聞いていただきたい!」とおすすめする講演です。

開催日 時間 会場 中分類

講演タイトル

講演者(所属)
推薦理由
3/17(土) 10:00~10:15 F202

7.4 量子ビーム界面構造計測

Pt L端時間分解X線磁気円二色性測定でみるFePt薄膜の磁化ダイナミクス

山本 航平

(東大物性研, 東大理)

X線自由電子レーザーSACLAは、高強度でコヒーレントなパルスX線を発生し、そのパルス幅はフェムト秒スケールであることから、夢のX線源として幅広く応用が期待されている。本研究は、特にその短パルス性を活かした時間分解測定によるスピンのダイナミクス研究であり、X線自由電子レーザーによる物性研究の嚆矢として大きな注目に価する。
10:00~10:15 F102

9.4 熱電変換

プルシャンブルー類似体を用いた二次電池構造型熱発電セルの作製とその評価

柴田 恭幸

(群馬高専)

講演者らは、熱起電力の異なる2種類のプルシャンブルー類似体薄膜を正極と負極に配置した二次電池構造型の熱発電セルを作成し、セル全体の熱サイクル(加熱・冷却)に伴う熱発電の評価を行なった。この熱発電セルとその発電原理は非常にユニークで、材料の選択肢を広げ、これまでにない環境下での応用も期待される先行的な研究である。
13:45~14:00 F214

15.3 III-V族エピタキシャル結晶・エピタキシーの基礎

超高速成長GaAsの低温フォトルミネセンス特性

生方 映徳

(大陽日酸㈱)

化合物半導体を用いた太陽電池の低コスト化に向けて、有機金属気相成長法で従来よりも桁違いに高速な成長する技術を確立した。低温フォトルミネッセンス測定で超高速成長GaAsでエキシトン由来の発光を確認するなど、高い結晶性も備えており、注目に値する。
15:15~15:30 A402

3.12 ナノ領域光科学・近接場光学

銀ナノ石畳(NASIP)のユニークな光学応答

納谷 昌之

(富士フイルム)

講演者らは、銀ナノ平板微粒子をランダムに分散した銀ナノ石畳(NASIP)構造によって、透明度の高さと日射遮熱効果を両立する優れたメタサーフェスを開発した。近接場光学に基づく光応答特性がマクロな光フィルターに応用された重要な研究成果であり、本講演はこれまでの研究を俯瞰し物理的起源について語られる貴重な機会であることから、注目講演に推薦する。
16:15~16:30 G202

12.5 有機太陽電池

Flexiblity perovskite solar cells with high photovoltaic performance using solution processed tin oxide nanoparticle

Yang Fengjiu

(Inst. of Adv. Energy, Kyoto Univ.)

ペロブスカイト太陽電池の軽量化やフレキシブル化に向け、n型半導体層の成膜温度の低温化が、重要な研究開発課題の一つである。本講演では、SnO2微粒子を用いて電子輸送層を低温プロセスで構築する手法を提案し、フレキシブルポリマー基板を用いたペロブスカイト太陽電池を作製し、17%程度のエネルギー変換効率と2000回の屈曲試験に対する安定性の両立に成功している。
3/18 (日) 9:30~11:30 P3

7 ビーム応用

薄型ピエゾバルブを用いたワンノズルツービム超熱原子線システム

横田 久美子

(神戸大工)

超熱原子ビームは、宇宙環境模擬実験やビーム励起材料プロセス研究の基礎実験技術として重要である。本研究は、単一ノズルから2種類のガスを同一箇所に自由なタイミングで照射可能とした点に大きな技術的進歩と学術的意義がある。今後、材料ナノ加工や触媒探索などの多分野に応用され組成制御や各ガスの反応時間相関に関する研究を飛躍的に進歩させると期待できる。
9:30~11:30 P7

11 超伝導

NbTi-Bi2223超伝導線材のゼロ抵抗接合

松本 凌

(物材機構, 筑波大)

高磁界を発生させるNMRなどでは、金属系超伝導体と高温超伝導体の両方のマグネットを用いる。高安定化のためには超伝導接続をしてゼロ抵抗の下で永久電流モードにて運転する必要がある。本発表は世界で初めて金属系超伝導体と高温超伝導体の超伝導接合を比較的に簡便な方法で実現し、200A以上の臨界電流を得た。
10:00~10:15 B203

3.13 半導体光デバイス

電子スピン偏極変調によるInAlGaAs面発光半導体レーザの高速動作

横田 信英

(東北大通研)

面発光レーザ(VCSEL)の直接変調速度の高速化を目指したスピン偏極変調法を提案し、その原理実証を行った。CW円偏光を用いて活性層に励起される電子スピン偏極度を差動変調しながら変調特性の測定を行い、緩和振動による速度制限を大幅に超える広い変調帯域を得ることに成功した。VCSELを超高速化できる技術として、注目すべき成果である。
12:00~12:15 F104

12.2 評価・基礎物性

PEDOT:PSSワイヤーを利用したオートエンコーダシステムの作製

岡田 将

(阪大工)

本研究では脳の情報処理法を模倣した人工ニューラルネットワーク(Artificial Neural Network : ANN)を高分子ワイヤーにより構築し、ソフトウェア上のANNとの違いを明らかにし、その特徴を考察したものである。高分子ワイヤーANNは、従来型で非効率なノイマン型コンピュータを用いたANN 演算に代わると考えられ、アナログ型のANN 専用ハードウェアの開発への寄与が期待され、注目講演として値する。
13:45~14:00 C202

17.2 グラフェン

ファンデルワールス超格子の自動作製:ロボットによる二次元層状物質の劈開・探索・積層

増渕 覚

(東大生研)

2D結晶のファンデルワールス接合は、これまでアライメント装置を用いて経験に基づいて作製されてきた。本講演は、劈開・探索・積層をロボットによる全自動化技術を報告するものである。グラフェンとhBNの30階積層のような手作業では到底到達できないレベルの基礎研究における進展が期待できることから注目すべき講演である。
16:45~17:00 D101

16.3 シリコン系太陽電池

湿熱ストレスによるc-Si太陽電池劣化部位の同定と温度特性解析

棚橋 紀悟

(産総研)

長期間屋外で使用される太陽電池モジュールは、湿熱ストレスで産生される酢酸等により経年劣化することが知られている。講演者らは、酢酸蒸気暴露による加速試験と非破壊な交流インピーダンス解析により、セル表面電極腐食に特有な電気シグナルが特性劣化と同期して変動することを示してきた。今回、その電気シグナルの起源、劣化部位同定への解析詳細が報告される。
17:00~17:15 B403

11.2 薄膜,厚膜,テープ作製プロセスおよび結晶成長

前駆体膜を利用したGdBa2Cu3Oy線材の接続時における印加圧力の影響調査

宮島 友博

(九大工)

銅酸化物超伝導体であるREBa2Cu3Oyを用いた第二世代高温超伝導線材の超伝導ジョイントは研究開発が始まったばかりであり、JSTの大型プロジェクトの一部としても取り上げられている。本講演は、その先鞭となる研究であり、超伝導ジョイントの超伝導特性評価の他にも透過電顕による微細構造評価も行っており、注目に値する。
17:30~17:45 D103

15.7 結晶評価,不純物・結晶欠陥

多結晶シリコンの非鏡面表面における機械学習を用いたエッチピット検出

小島 拓人

(明治大理工)

結晶に含まれる転位などの欠陥を、選択エッチングによって光学顕微鏡で観察可能な凹みとして顕在化するエッチピット法は、強力な結晶評価法である。しかし、観察画像からエッチピットと、汚れや傷などを区別することが課題であり、多く場合では人の目で解析がなされていた。本講演はその自動識別を機械学習によって試みたものであり、先駆的な研究として注目される。
3/19 (月) 9:15~9:30 E202

15.4 III-V族窒化物結晶

多光子励起フォトルミネッセンス測定によるGaN結晶中の貫通転位の種別判定

谷川 智之

(東北大金研)

GaN結晶中の貫通転位を非破壊環境で三次元イメージングする手法として、多光子励起フォトルミネッセンスが提案されています。今回、本手法で観察される暗線をコントラストの明暗と傾きによって三通りの性質に分類し、貫通転位の種類との対応を調べました。その結果、刃状転位・螺旋転位・混合転位を判別できることが分かりました。
9:45~10:00 B303

1.6 超音波

弾性表面波の漏洩減衰測定によるガス分析方法

山中 一司

(ボールウェーブ)

音波物性分野において音波減衰は重要なパラメータである。弾性体を表面を伝搬する弾性表面波(SAW)を利用したガスセンサは古くから計測されている。しかし、伝搬距離が短いため、ガスへのエネルギ漏洩に伴う漏洩減衰を測定することは困難であった。著者らは、ボール上を周回するSAWを見いだした。このSAWはボール上を数十回以上周回するため、ボールの直径が数mmであっても長距離伝搬が可能である。このため、ガス中への漏洩減衰を評価できる。本講演では、ボールSAWセンサを用いた微量水分検知におけるバックグラウンドのガス検知のため、感応膜を設けず漏洩減衰を用いた評価方法を提案している。物理的・応用的に重要な発表であり、注目講演に推薦する。
10:15~10:30 C104

6.1 強誘電体薄膜

バイアス掃引SNDM法による分極反転特性の面内分布観察

平永 良臣

(東北大通研)

走査型非線形誘電率顕微鏡(SNDM)は強誘電体のドメイン観察に適した手法として開発が進められている。通常はステージバイアスを印加せずに2次元プローブ走査を行うが、発表者はステージバイアスを掃引しながら走査を行うことで、ナノスケールで分極反転挙動が観察できる可能性を見出しており、関係の研究者・技術者にとって極めて有益な情報であるため強く推薦する。
10:45~11:00 C201

8.3 プラズマナノテクノロジー

PS-PVD ナノ Si:Sn 粒子を用いた負極複合化による LIB 特性向上

東原 智秋

(東京大工)

リチウムイオン電池(LIB)の高容量化に向け、新規負極材料の開発が活発である。本発表ではSiナノ粒子を高速に作製可能なプラズマ技術を用いてSn担持Siナノ粒子を作製した。作製したナノ粒子を用いたLIBの充放電特性は、Siナノ粒子を用いた場合に比べて顕著な容量増加が見られた。以上は、LIBの電極材料開発に新生面を拓くものと期待できる。
14:00~14:30 C102

S12 進展めざましい電子源と最近の新たなアプリケーション

Highly Bright and Stable LaB6 Nanowire Electron Source

Han Zhang

(National Institute for Materials Science)

電子顕微鏡の分解能向上のため、高輝度電子源への要求は高い。著者らは、熱電子源として知られる低仕事関数材料の六ホウ化ランタン(LaB6)を単結晶のナノワイヤー化する技術を開発した。それを、電界電子放出源として用いる事で、W[310]-FE Tipと比較して、高輝度、狭いエネルギー幅、安定性に優れるなどの優れた特性を実現した。まさに、次世代電子源として期待できるものである。本講演では、その性能の詳細について説明を行なうもので、注目に値する。
15:30~15:45 C201

8.4 プラズマライフサイエンス

分子動力学法を用いた細胞膜間への水チャネル形成による活性酸素種の膜内輸送特性解析

今井 亮太

(首都大理工)

プラズマ医療の分野の最重要課題の一つに、放電と生体膜との相互作用の詳細な理解がある。著者らは、放電活性種の輸送や膜界面への電界重畳を考慮した生体膜の分子動力学シミュレーションを提案しており、今回は、局在化やチャネル形成によって活性酸素種における輸送効率の変化の定量評価という、プラズマ医療分野にとって重要な成果が発表される。
15:30~15:45 C301

3.11 フォトニック構造・現象

ダブルホールフォトニック結晶レーザの10 W高出力・高ビーム品質パルス動作

吉田 昌宏

(京大院工)

本講演は2次元フォトニック結晶を再成長により埋め込んだ面発光レーザにおいて直径500mmの円形領域における大面積コヒーレント発振を達成し、パルス出力10W以上、M2
3/20 (火) 13:15~13:45 G203

16.1 基礎物性・評価・プロセス・デバイス

遷移金属含有アルカリリン酸塩ガラスの特異な結晶化

本間 剛

(長岡技科大)

本講演は、ナトリウムイオン電池の正極材料として使用できる遷移金属リン酸塩化合物の、非晶質相を経由した合成に関する招待講演である。融液の急冷による非晶質相の合成や、得られた非晶質相の結晶化は、通常の結晶合成法では合成が困難な非平衡相を合成する手法として有用であり、その合成法の現状と今後の展開が紹介される。
14:45~15:00 F202

1.5 計測技術・計測標準

多層蓄電池内における3次元磁場分布画像再構成法に関する研究

鈴木 章吾

(神大院理)

本研究は、電気自動車・航空機・スマートシティー分野を中心に需要の高まる蓄電池の健全評価に関する研究である。動作に伴う3次元磁場分布の断層画像化について論じ、可視化したものであり、ニーズ・タイムリーの観点からも注目に値する。