注目講演

秋講演会プログラム編集委員が選んだ注目講演です。是非ご覧ください。また、注目講演のうち、一部の講演はプレスリリースもしております。併せてごらんください。

応用物理学会秋季学術講演会 14件の注目講演プレスリリース  2022年9月14日

中分類分科名 講演番号 講演タイトル 講演者 所属
注目講演推薦理由
1 1.5 計測技術・計測標準 20p-A301-11 見えない静電気分布を発光可視化する静電気発光センシング材料の発見 寺崎 正 産総研SSRC
本講演は、世界で初めて、静電気を発光可視する機能材料を見出し、可視化を達成したものである。静電気は、爆発・火災源、更には超低電力IC、軽量・電気モビリティなど次世代先端技術の不具合リスクながら、情報が見えないために評価・対策が困難である。これらを鑑みると、本講演は学術的にも産業的にも注目に値する。
2 2.1 検出器デバイス開発 21a-B201-5 3次元サブミクロントラッキング可能な超微粒子原子核乾板を用いた反跳陽子飛跡検出による中性子スペクトル測定法及びイメージング技術の開発 赤松 咲耶 東邦大理
エマルジョンを用いた独創的な検出方法であるため。
3 3.6 レーザープロセシング(旧3.7) 22a-C301-6 気相レーザーアブレーション法により作製されたSiCナノ微粒子の発光特性の雰囲気ガス圧依存性 山口 遼介 東理大院
 本研究では,間接遷移型半導体であるSiCのナノ微粒子化によって,量子閉じ込め効果を利用した発光効率の向上を目的とした.SiC微粒子作製法として気相レーザーアブレーションを用い,異なるターゲットからの距離で捕集したSiCナノ微粒子の発光特性を調査したところ,捕集距離が遠いほどブルーシフトすることが明らかとなった.
4 6.1 強誘電体薄膜 20p-B103-17 柔粘性強誘電体ドメイン構造の電界変調イメージングと分極スイッチングのその場観察 宮本 樹 東大院工
室温で4軸方向の自発分極を持つ分子性強誘電体AH-Rにおいて、複屈折電界変調イメージングおよび偏光像の時間分解撮影により、分極反転挙動のその場観察の結果が報告されます。電場印加下のドメインダイナミクスの解明がなされており、注目講演として推薦します。
5 6.4 薄膜新材料 20a-C302-9 微細線セラミックサーミスタ 中島 智彦 産総研
本研究では光結晶化技術を用いて、15μm の微細な樹脂ワイヤ上へ膜厚1μm のスピネル型マンガン酸化物サーミスタ膜を製膜することに成功している。このサーミスタは100ms 程度の高速な温度応答を示すため、ウェアラブルデバイスや3D エレクトロニクスデバイスに応用可能である。また、光結晶化技術は表面機能化の新手法として発展することが期待される。
6 8.2 プラズマ成膜・エッチング・表面処理 22p-A406-3 高スループットSiN ALEを実現する表面反応メカニズムの解明 平田 瑛子 ソニーセミコンダクタソリューションズ(株)
先端半導体プロセスでは、原子層レベルのエッチング加工が求められており、プロセス時間の短縮が課題である。著者らは、窒化シリコンの原子層エッチングにおいて、高イオンエネルギーを用いる手法により、アルゴン脱離ステップのプロセス時間を1/5に短縮することに成功した。今後、先端半導体の進展に寄与すると期待され、注目講演として推薦する。
7 9.4 熱電変換 21a-C102-6 高効率p型GeTe/n型Mg3Sb2熱発電モジュールの開発 安藤 冬希 パナソニック ホールディングス
網羅的な計算により、Mg3Sb2の熱膨張率と合うようにGeTe系熱電材料の熱膨張率の最適化を行うとともに、材料としてのZT=1.7を実現した。この材料を用いて15対の熱電モジュールを作成した報告である。「極めて高効率な熱発電」と報告されており、理論の活用と実用性の観点で注目に値する講演である。
8 11.3 臨界電流,超伝導パワー応用 22a-A304-2 高温超伝導ダイオードを用いたマイクロ波信号の整流 土屋 雄司 東北大金研
本講演は,高温超伝導薄膜において薄膜表面と基板界面での表面バリアの違いに起因したユニークな非対称臨界電流特性を利用して,前回は~100 MHzまでの交流信号の整流特性を確認しており,今回さらに~ GHzまでの整流を試みようとしている.新しい超伝導応用として長距離ワイヤレス送電につながる超伝導ダイオードの研究として,注目に値する発表である.
9 12.2 評価・基礎物性 23a-C106-6 有機半導体の低振動数分子内振動による電子バンド変調と伝導物性 石井 宏幸 筑波大数物
有機半導体のキャリア移動度はどこまで高くなるのだろうか? この問いに答えるためには,電気伝導の促進要因だけでなく阻害要因も理解することが不可欠である。本講演は,有機半導体結晶に特有な低波数格子振動による電子バンド変調の効果を,発表者独自の電気伝導理論である「時間依存波束拡散法」へと採り込むことで,高精度な移動度の予測を実現したものである。
10 12.6 ナノバイオテクノロジー 22p-A106-11 液中FM-AFMによる脂質膜–マイカ界面における水和層の直接可視化 木南 裕陽 京大工
周波数変調原子間力顕微鏡を活用し、あらゆる分析手法でも理解が困難である脂質膜ー基板間の微小空間に存在する水の構造・物性の直接計測に取り組んでおり、注目講演に値する。
11 13.8 光物性・発光デバイス 21a-C101-4 Eu添加GaN表面平坦化層導入による微傾斜(0001) InGaN量子井戸発光の均一性向上 大和 玲雄 阪大院工
本講演は、微傾斜基板上GaN成長において表面に生じるマクロステップを低減する技術に関する報告である。希土類元素のEuをin-situ添加することで、発光の不均一性を誘起するマクロステップが解消されるとともに、InGaN量子井戸構造の発光特性改善に成功している。表面平坦化技術としてデバイスへも応用可能であり、注目すべき講演である。
12 15.4 III-V族窒化物結晶 20a-C200-1 Structural analysis of N-polar InGaN layer grown on ScAlMgO4 substrate without buffer layer Mohammed Ali Najmi King Abdullah Univ.
長波長InGaN系LEDの高効率化に向けて、 ScAlMgO4基板上への高品質 InGaN 薄膜の格子整合成長が期待されています。今回、有機金属気相成長法により、低温バッファ層を用いることなく、ScAlMgO4基板上に結晶性の良いN極性InGaN薄膜を成長させることに成功しました。N極性InGaNはIn取り込み効率が高いことから、今回作製されたInGaN薄膜を下地層とした長波長InGaN系LEDへの応用が期待されます。
13 15.4 III-V族窒化物結晶 20a-C200-8 HVPE法によるScAlMgO4基板上の高品質GaN基板作成(Ⅲ) MBEによりGaNを直接成長したテンプレート 福田 承生 福田結晶研
自然剥離が可能なScAlMgO4基板を利用したGaNバルク単結晶作製プロセスが検討されています。ScAlMgO4基板を剥離後に再利用することで、プロセスを低コスト化できますが、剥離後のScAlMgO4表面の平滑性改善が課題でした。今回、MBE成長させたGaNを界面に挿入することで、従来手法と比べ平滑度の高い分離面を得ることができました。
14 15.6 IV族系化合物(SiC) 20p-C306-4 プロトン注入によるSiCエピタキシャル層の基底面部分転位の運動抑制 原田 俊太 名古屋大
SiCバイポーラデバイスでは、順方向通電時に基底面転位が拡張し積層欠陥が発生するために起こる順方向劣化が未だ大きな課題として残っている。現在、デバイス構造を工夫し順方向劣化を回避する手法が提案されているが、本研究は、プロトン注入により基底面転位の拡張が抑制されることを見い出しており、順方向劣化の根本的解決が期待できる新しい発見である。
15 17.2 グラフェン 22p-B202-6 グラフェン発光素子による高空間分解赤外分光 中川 鉄馬 慶大理工, 早大材研
本講演は最小で500 nm角の大きさのグラフェン黒体輻射源を作製し、その近傍に分析試料を配置・捜査することで、高い空間分解能の赤外分光測定を実現している。グラフェンの持つ良好な高周波特性を利用した感度の向上や、近接場の効果による回折限界を超えた空間分解能の実現など、学術的にも大変興味深く注目講演に相応しい。
16 21.1 合同セッションK 「ワイドギャップ酸化物半導体材料・デバイス」 20p-B203-6 酸化ガリウム100 mmエピウエハの結晶品質改善 林 家弘 ノベルクリスタルテクノロジー
酸化ガリウムは、高品質で大口径な単結晶を安価に作製できるため、次世代パワーデバイス用の半導体材料として期待されている。本講演はエピウエハの品質改善により、欠陥密度をこれまでの1/10にまで低減することに成功したものである。その結果、10 mm 角の大きな電極面積のダイオードを実証し50 Aの大電流を記録している。当該分野の大きな進展と認められることから注目講演に推薦する。
17 23.1 合同セッションN「インフォマティクス応用」 22p-M206-7 PINNs (Physics Informed Neural Networks)を用いた熱対流解析の高速化 竹原 悠人 阪大基工
機械学習を用いたシミュレーション結果の高速推定は非常に有用であるが、その推定結果は必ずしも物理現象を正確に記述しているとは限らず、高精度化のためには多くの訓練データの取得が必要であった。報告では熱流体解析(CFD)について、Physics Informed Neural Networks(PINNs) を用いて物理現象を満たした上での流動、伝熱に関する高速予想がなされており、先駆的な取り組みとして注目される。
18 FS.1 フォーカストセッション「AIエレクトロニクス」 21a-C201-6 超伝導磁束量子ビットを用いたアニーリング方式の4-bit因数分解回路の検討 才田 大輔 産総研, 富士通
本研究は超伝導磁束量子ビットからなる独自の量子アニーリング因数分解専用回路の検討に関する。今回、これまでに動作実証した単位格子回路を拡張して4-bitの因数分解回路を形成しその動作を検証した。異なる問題入力に対してシミュレーションと実験の出力が一致し、その結果は正しく因数分解されたものであることが確認され、本方式での基本動作が実証された。
19 CS.8 8.3 プラズマナノテクノロジー、9.2 ナノ粒子・ナノワイヤ・ナノシート、13.6 ナノ構造・量子現象・ナノ量子デバイスのコードシェア 23a-B102-3 Semiconductor-Superconductor Hybrids for Topological Superconductivity Hongqi Xu Peking Univ.
マヨラナ粒子は量子コヒーレンスに優れていることから新たな量子ビットとして期待されているが、それがトポロジカル超伝導体内に存在することが理論的に予想されて以来、その実験的探索が活発である。講演では、トポロジカル量子コンピューティング応用の観点から、主に半導体ナノワイアやナノシートと超伝導体とのハイブリッド構造を用いた実験の現状を紹介いただきます。
20 T5 最先端で活躍するガラスとガラス状態~2022 年国際ガラス年 IYOG 記念シンポジウム~ 20a-B200-5 スピングラスから量子アニーリングへ 西森 秀稔 東工大IRFI
国際化ガラス年IYOG2022を記念して、東工大の西森秀稔先生にスピングラス・量子アニーリングについて基調講演をお願い致しました。是非、ご聴講ください。
21 20p-B200-1 ガラスが織りなす光ネットワーク ー社会課題と今後の展望・期待ー 中沢 正隆 東北大学災害研
国際化ガラス年IYOG2022を記念して、東北大の中沢正隆先生に光通信で活躍するガラスデバイスの社会における役割・課題・今後の展望について基調講演をお願い致しました。是非、ご聴講ください。
22 20p-B200-6 アモルファス酸化物の半導体とその社会実装 細野 秀雄 東工大元素センター, NIMSMANA
国際化ガラス年IYOG2022を記念して、東工大の細野秀雄先生にアモルファス酸化物半導体の近年の進展と社会実装について基調講演をお願い致しました。是非、ご聴講ください。
23 T13 ペロブスカイトによる次世代材料の創成と応用展開 21a-B101-2 無機ペロブスカイト半導体の光電変換における高電圧発電特性の開発 宮坂 力 桐蔭横浜大医用工, 東大先端研
宮坂力教授はペロブスカイト太陽電池の研究により、2017年にはクラリベイト・アナリティクス引用栄誉賞、2021年9月にはRank賞を受賞し、本分野を牽引する第一人者である。過去にはベンチャーを経営されるなど、本技術の商業化のけん引役としても知られております。本講演では、これまでの講演者の知見を踏まえた材料の特性から実際のデバイス展開までを御紹介頂く。
24 T14 次世代ICTと未来医療を支える神経科学・神経工学・脳型コンピューティング 20p-A401-8 脳表血流・蛍光観察用ヘッドマウントCMOSイメージングデバイス 春田 牧人 奈良先端大
脳機能の神経基盤の解明に向けて様々な技術開発が進められる中で、自由行動下にあるモデル動物脳の神経活動を直接観察する技術の開発は重要な課題の一つである。神経活動はまたBOLD効果を通じて脳血流変化と密接に結びついている。本発表では、神経活動と脳表血流を同時に計測可能な新しい小型CMOSイメージングデバイスについて報告される。
25 T15 ヘテロ材料が拓く新機能 20p-A307-6 希薄窒化物結晶の結合状態制御に向けたGaPN混晶への電子線照射試験 平井 健登 豊橋技科大
本講演は,半導体材料に放射線を照射した結果結晶性が向上するという,一般にみられる現象すなわち結晶が放射線損傷/劣化を起こすのと反対の効果を示すもので,興味深い.